2023 amendments to Unfair Competition Prevention Act
令和5年不正競争防止法改正
第1 改正の概要
令和5年改正不正競争防止法は、2024年4月1に施行されました。
主要な改正点は、次のとおりです。
① 商品形態模倣の禁止(2条1項3号)のメタバース(インターネット上の仮想空間)内での商品取引への拡張
② 損害推定規定(5条)を特許法102条と同様の規定に改正
③ 損害推定規定(5条)の適用対象を不正競争行為により生産された物、電子情報及び役務に拡張
④ 営業秘密を使用して生産した事実を推定する規定の適用範囲の拡張
⑤ 限定提供データ(不正競争防止法で保護されるビックデータ)の定義の拡張
⑥ 営業秘密不正取得・使用・開示についての適用対象を日本国外での行為に拡大
第2 主要な改正点の詳細
1 商品形態模倣の禁止(2条1項3号)のメタバース(インターネット上の仮想空間)内での商品取引への拡張
不正競争防止法2条1項3号は、他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡する行為を禁止します(ただし、禁止期間は商品の国内販売が開始されてから3年間に限定されます)。改正法は、「他人の商品の形態を模倣した商品を電気通信回線を通じて提供する行為」を不正競争防止法2条1項3号で禁止される行為に追加しました。
改正法の文言によると、規制対象となる模倣商品は、物理的に存在する有体物に限られず、メタバース内のデジタルデータの形態の商品も含み、規制対象となる行為は、有体物所有権の移転に限られず、電子データの送信も含むとの解釈が明らかになりました。そのため、改正前の不正競争防止法が規制対象として想定していたリアル商品を模倣したリアル商品に加えて、リアル商品を模倣したデジタル商品、デジタル商品を模倣したデジタル商品及びデジタル商品を模倣したリアル商品も規制対象に含まれることになります。
リアル商品をデジタル商品として模倣する例として、オンラインゲームにおいてプレイヤーが保有するバッグの電子データ(デジタル商品)であって、ファッションブランドが開発した新作バッグ(リアル商品)と実質的に同一のデザインのものを販売する行為が挙げられます。なお、この例において、新作バッグのデザインが著作権法上の著作物であれば、これを模倣したデジタル商品であるバッグの大量販売は公衆送信権を侵害することになります。しかしながら、実用性のある商品のデザインの著作物性は認められない傾向があります。
2 損害推定規定(5条)を特許法102条と同様の規定に改正
不正競争行為に係る物の譲渡又は役務の提供がなされたときは、基本的に、[被侵害者の利益単価 × 侵害者の譲渡数又は役務提供数]が損害である逸失利益の額と推定されます。改正不正競争防止法では、特許法102条1項2号と同様の規定である5条1項2号が新設され、被侵害者の販売・提供能力の限界又はその他の販売・提供することができなかった事情のために推定が覆滅される場合には、推定覆滅部分についてライセンス料相当額の損害賠償請求をし得ることが明記されました。
3 損害推定規定(5条)の適用対象を不正競争行為により生産された電子情報及び役務に拡張
改正不正競争防止法5条1項本文によると、当該損害推定規定は、改正前の適用対象であった不正競争行為を組成する有体物に加えて、不正競争行為を組成する又は不正競争行為により生産された電子データ(例えば、メタバース内の模倣商品、不正取得した営業秘密を使用して作成されたソフトウェア)の譲渡、及び不正競争行為により生じた役務の提供(例えば、限定提供データを無断使用して限定提供データの提供者と競合する役務を提供することにより不正の利益を得た場合)にも適用されます。
4 営業秘密を使用して生産した事実を推定する規定の適用範囲の拡張
相手方が物若しくは電子データを作成するにあたり、又は役務を提供するにあたり、実際に自己の営業秘密が利用された事実を立証するのは困難です。そのため、不正競争防止法5条の2は、これらの事実の推定をします。
従来は、この事実推定が適用されるのは、アクセス権限のない者が営業秘密を不正取得した場合、このような不正取得がなされたことを知って営業秘密を取得した場合等の悪質な場合に限定されていました。
改正不正競争防止法によると、その他の場合であっても、相手方が営業秘密が記録されたメディアを保有していたときには、相手方が自己の営業秘密を使用すれば生産できる物若しくは電子データを譲渡した事実、又は相手方が自己の営業秘密を使用して実行可能な評価・分析サービス役務を提供した事実が立証されることにより、相手方が自己の営業秘密を使用してこれらの生産又は役務提供をした事実が推定されます。ただし、当該推定規定(不正競争防止法5条の2)の適用対象は、営業秘密のうち技術情報に限定されます。
5 限定提供データ(不正競争防止法で保護されるビックデータ)の定義の拡張
地図データ、消費動向データ等のビッグデータは、①限定提供性(ビッグデータが提供されるのが特定のサービス受領者に限定されていること)、②相当蓄積性(相当量のデータが電子的に蓄積されていること)及び③電子管理性(ビッグデータへのアクセスがID・パスワード等により電子的に管理されていること)の要件が充足される場合には、不正競争防止法上、「限定提供データ」として、営業秘密と同様に保護されます。
改正前の不正競争防止法では、秘密管理されているビッグデータは、保護対象である「限定提供データ」から除外されていました。その理由は、ビッグデータは、サービス受領者と共有されることが前提とされているので、秘密管理されていないはずであるということでした。しかしながら、公知情報ではあるものの秘密管理されているビッグデータがサービス受領者に提供されることが判明したため、改正不正競争防止法は、秘密管理されているビッグデータも「限定提供データ」に含まれるとしました。ただし、「営業秘密」に該当するビッグデータは、「限定提供データ」ではなく「営業秘密」として保護されます。
6 営業秘密不正取得・使用・開示についての適用対象を日本国外での行為に拡大
新設された不正競争防止法19条の3は、日本国内で管理されている秘密情報を海外で不正取得・使用・開示する行為(例えば、秘密情報にアクセス権限を有する従業員が、秘密情報を海外に持ち出した上、不正の利益を得る目的で競合者に開示する行為、競合者が不正取得されたものであることを知って海外で営業秘密を取得する行為)に日本の不正競争防止法が適用されることを規定します。ただし、不正競争防止法19条の3は、営業秘密が海外での事業のみに使用される場合には、日本の不正競争防止法の適用が排除されるとしています。
新設された不正競争防止法19条の2により海外での営業秘密不正取得・使用・開示に日本の不正競争防止法が適用される場合には、東京地方裁判所に訴訟を提起することができます(新設された不正競争防止法19条の1、民事訴訟規則6条の2)。この場合には、現地の不正競争防止法も適用され、現地の裁判所も競合して裁判管轄を有する可能性があります。
/以上
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